借金の相続

【1】負債相続難民

定義

負債相続の場面で、適切な選択ができず「泣き寝入り」している相続人

 

3つの要因

  • 負債相続のリスクを知らない相続人
  • 支援に力を入れない専門家
  • 専門家の知識(認識)不足による被害

 

専門家の知識不足の代表的なもの

  • 3ヶ月の期限の理解不足
  • 連帯保証債務の見逃し
  • みなし単純承認事由に対する理解不足
  • 遺産分割、遺言執行での認識不足

等など

【2】借金の相続とは

【事例】

・Aが他界

・Aには2000万円の借金がある

・相続人はB・C・Dの3人

 

「債務者が死亡し、相続人が複数ある場合に、被相続人の金銭債務その他可分債務は、法律上当然に分割され、各共同相続人がその相続分に応じてこれを承継するものと解すべきである。」(最判昭34.6.19)〈分割債務説〉

したがって、妻Bが1000万円、子C・Dがそれぞれ500万円ずつ借金を承継することになる。

ここで本来は、

相続分の割合 ① 遺言による相続分の指定(民902)

  • 遺産分割協議(民907)
  • ①②がない場合は民法で定められた割合(法定相続分・民900)

によって定められる。

 

ただし、債務については、仮に法定相続分の割合と違う割合で相続すると遺言又は相続人全員による協議で定めたとしても、「相続人間では有効」であるが「債権者には対抗できない」

ということに十分な注意が必要である。

 

上記事例で、もし相続人間で「妻Bが債務の全てを承継する」と遺産分割協議で定めても、債権者はそれを無視して子C・Dにそれぞれ法定相続分の割合通り500万円ずつ請求することが可能である。もし子C・Dが債権者に弁済した場合は、Bに対して自身が支払った分を求償請求することになる。

 

債権者が承諾してくれる場合は、法定相続分と異なる負担割合も可能となる。

この場合、法律的には「免責的債務引受」となる。

 

免責的債務引受

債務が当初の債務者以外のものに移転し、当初の債務者が債務を負担しなくなる形態の債務引受。

債権者との合意若しくは同意が必要。

 

債権者と協議をする場合は、その「内容」に十分に注意すること。

実務上は、

  • 免責的債務引受契約(妻Bが全額負担する)
  • 重畳的債務引受契約(B・C・Dの連帯債務)
  • 連帯保証契約(新たな保証人をつける)
  • 担保権設定契約(新たな担保を差し入れる)

※①以外の契約は全て債権者の利益でしかない

※債権者によっては、免責的債務引受契約が連帯保証契約を兼ねている場合がある。

仮に妻Bが全額承継することになっていても、C・Dが連帯保証人になる等。

C・Dは法定相続分だと500万円の債務が、2000万円の債務になる。

債権者(貸金業者・金融機関等)との交渉は慎重に行うこと。

素人が予備知識なしに交渉すると、本来の債務相続より悪い条件(内容)になることが多いです。

※ここにも専門家が関与していない実態がある。

 

 

 

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