相続の単純承認

【相続の単純承認】

負債相続
相続放棄手続き→相続人自らがやるものという専門家の認識
専門家の認識→専門知識を生かす場ではない

相続人がおかれている現状

⑴ 借金を相続されるという認識は?
→どこまで引き継がれるか、⇒ 権利義務の一切

⑵ 相続手続きに対する正しい知識は?
→相続分の放棄(譲渡)と相続放棄の混同、相続放棄の期限

⑶ 相続手続き後のリスクについての認識は?
→遺産分割協議⇒単純承認
→単純承認⇒民法921条(法定単純承認)

※相続債務の弁済は単純承認か?

(ア)相続人が固有の財産で相続債務を弁済する行為は処分行為に含まれない。                (反対説有)

(イ)相続財産を利用して相続債務の弁済には注意が必要。
・相続した現金をつかって相続債務の弁済をすることは問題ないと思われる。
・不動産、動産、預貯金等の債権を換価して相続債務の弁済することは処分行為に該当するとする説がある。(凍結されていない預金口座からの出金には要注意)

(ウ)財産の経済的価値
・判例、通説では、処分に該当するか否か判断にあたっては、経済的価値も考慮される。

(エ)債権行為
・相続財産に含まれた債権を、相続人が単独で取り立てを行い「自己の債権として回収する行為」は、処分に該当する。(最判昭37.6.21)

・相続財産に賃貸している不動産があるときに、その賃料を取り立てることは管理行為として処分行為に該当しない(最判昭39.2.5)

(オ)その他
処分行為に該当する行為として

・株式に基づく株主権の行使
→役員変更登記のため⇒法人保険請求のためといわれて思わずやってしまう
→遺産分割協議への参加

※葬儀費用を相続財産から支払った場合は、形式上は処分に該当するが社会的にみて不相当な額でなければ本件処分に該当しない(大阪高決平14.7.3)グレーな判例

●法定単純承認へのアドバイスは、実務上一番気をつけなければいけないポイント。
○もし可能であれば「相続財産には一切手をつけない」。

ただし、相続財産に対し相続人は自己の財産と同一の管理義務を負う(民918①)
保存行為まで一切何もしないことにより、相続財産に損害が生じることがある。
他の相続人や相続債権者から賠償責任を追求される可能性がある。
民法第918条第2項の規定により、家庭裁判所に相続財産管理人を定めてもらうことも検討する必要がある。

【重要】

よくある勘違い
「相続分の放棄(譲渡)」を「相続放棄」と履き違えている

「自分は、相続人間の協議で相続を放棄した」と言われる方がとても多いです。
これは、法律でいうところの「単純承認」したうえでの「相続分の放棄(譲渡)」です。
この場合、積極財産(不動産や預貯金)を受け取らないで、借金があればそれは法定相続分どおりに承継するということです。
もし、債権者(金融機関)から請求を受けた場合、相続人(自分)固有の財産から弁済しなければなりません。

 

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